2021年10月3日日曜日

惡の読書日記 シド・ヴィシャスの全て VICIOUS―TOO FAST TO LIVE… アラン・パーカー(著)

 2021年 10月 2日


ブログを更新するのを忘れていたわけでなく、ブログに載せるべき本を読んでいなかっただけである。「シド・ヴィシャスの全て VICIOUS―TOO FAST TO LIVE… アラン・パーカー(著)」



言わずと知れた、セックス・ピストルズのメンバーの一人である「シド・ヴィシャス」のお話である。本書にてはじめて知ったことも多く、あのナンシーがユダヤ人だったこと。スリッツのヴィヴと付き合っていたこと。クラッシュのミック・ジョーンズは本当にいい人。そしてナンシーを殺害したのはシドでなくとある男で、そいつは俺がナンシーを殺したなどと言ってたらしいが、結局何年か前に死んでしまって今ではナンシーは誰が殺害したのか解らず事件は迷宮入り(アメリカは時効がないけど)となっている。だが例え現時点でそいつが犯人であるという事実が解ったとしても、シドの無罪を信じていたシドの母親も、シドもナンシーもこの世にはいない。面白いのは、セックス・ピストルズのどの本を読んでもマルコムは最低の男として書かれ、そう評価されていると言うこと。

セックス・ピストルズが世間にゲロを撒き散らした僅か数年のごく一部にしか参加していないシド・ヴィシャス。唯一のアルバムでもベースを弾いているのはごく一部の曲だけで、スティーブ・ジョーンズがオーバーダブをしているので、シドのベースは殆ど聞こえてい無いに近いらしい。最後のライブ盤(アメリカでのライブ音源)を聴いても、下手過ぎるベースの音が時々聞こえてくるだけで、弾いてない部分も多い。シドはセックス・ピストルズででも、パンクの時代の流れでも、ミュージシャンでなくシドの存在自体が全てであり、悪い意味で象徴だったような木がする。さらにジャンキーであり、早くに(21歳)亡くなってしまったので、彼の死がさらにパンクでの存在感を倍増させてより象徴的な存座に死後ものし上げてしまって今に至るようだ。

人生の途中で、シドは自分の生き方について考え、このままジャンキーでいるのは間違っていると気づいたらしく後戻りをしたかったらしく、当時のバンド関係者に悩みを打ち明けたが、打ち明けられた人物もどうすればいいのか答えようがなかったそうだ。そしてこの世を早過ぎる死で駆け抜けてしまった。後日相談された人はきちんと答えてやることが出来なかったことを後悔し、10代のヤク中毒者の復帰をサポートする仕事についたらしい。立場は変わるがグレイトフルデッドのガルシアも、バンドを辞めてひっそりと生活をしたかったのだが、グレイトフルデッドと言う存在がスタッフを雇いそのスタッフの生活とスタッフの家族の生活を考えると、バンドを解散してやすやすと隠居生活することができずに続けるしかなく日々コカインに走っていたらしい。

結局、音楽活動というのは親しい友達と楽しみでスタートするのだが、バンドが大きくなる、シーンが大きくなる、会社組織になると見えるようで見えないけど存在だけど、自分ではコントロールできない大きな存在になってしまっているのだと。ファンが見ている世界よりも、実際の話は音楽に関する本は何を読んでもこういった恐ろしい話が見えてくるのはなんだか音楽産業の最大の問題点をこっそり覗いている感覚になる。

ジョン・ライドン(セックス・ピストルズのヴォーカリスト)がいつも、メディアの前で思ってもしないこと(嘘)ばかりいう理由を思い出した。本当のことを言っても誰も信じないからメディアに書かれないので本当に思っていることは言わないらしい。セックス・ピストルズの再結成の記者会見でジョン・ライドンがシドのことをあまり良いように言わなかったので、シドの母親はその夜に涙したらしいが、ジョン・ライドンは本当のことをメディアで言うことはないので、涙することはなかったのだと思う。

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