2020年12月30日水曜日

悪の毒書日記 モリッシー自伝 モリッシー(著)

 

2020年 12月 27日

何ヶ月か掛けてやっと読み終えた、モリッシーの自伝。
ハードカバーで400ページを超える大作である。これを翻訳した上村彰子氏は素晴らしい狂気の持ち主と言える。ここまでくると翻訳ではなく、共著であると言えるレベルである。
 
 


モリッシーは元スミスのヴォーカリスト。スミスは80年代イギリスで活躍したマンチェスター出身のバンドである。スミスは「Queen is Dead〜女王は死んだ」、「Meat is Murder〜肉食は殺人だ」というタイトルのアルバムを発表したバンドである。そのスミスの歌詞、レコードジャケットのヴィジュアル面をモリッシーが担当していた。作曲はジョニー・マーというギターリストが殆ど担当していた為、スミス=モリッシー+ジョニー・マーであると言われていた。バンドの後期のサポートギターリストが、グレック・ギャノンという人だったのを覚えてるが、ベーシストとドラマーの人の名前は忘れてしまった。「WHAM」はジョージ・マイケルともう一人は誰だっけ?

この自伝の凄いところは、ほとんどがモリッシーの恨み節なのである。幼年期の話は置いておいて、音楽活動を始めてから、モリッシーの苦行はスタートするのである。バンドメンバーの繋がりから、ラフ・トレードとの契約。実はこれまでラフ・トレードがスミスを発見発掘したのだと思っていたらそうではなく、モリッシーの戦略でラフ・トレードへ売り込んだらしい。しかし、スミスが売れまくった為に、ラフ・トレードのノンビリしたマイペース的な悪く言えば、そんなに売れなくてもいいかなという間違った非商業主義を壊滅させてしまった。そしてアメリカのレコード会社が全くPR活動をしない不満。しかもライブのギャラについては一切受け取っておらず、タダ同然でライブをやっていたらしい。誰が搾取をしていたのか?
そしてバンド解散後にソロ活動は順調に進んだのだが、記憶の彼方の元スミスのメンバーに音源の利益を25%遡ってよこせと、スミス時代に作曲もアレンジもビジュアルにも一切口を挟まなかったくせに裁判を起こされるという始末。しかも裁判所の裁判官は貴族のくせに裁判中に居眠り、鼻くそをほじる奴で弁護士もへんちくりんな糞野郎で結局モリッシーの敗訴ときた。
かのパンクバンド、スージー&バンシーズのスージーとのデュエット作も実はモリッシーがスタジオ代を払っているのにスージーの作品としてポリドールからの発売。英国の権威ある音楽ジャーナリズム雑誌NMEは嘘ばっかしのインタビューを書き上げるなど・・・という半分以上が、モリッシーの悲しくも苦行の音楽生活を綴った内容なのである。

しかし、そんな恨みの文章の中で、ときおり魅せるモリッシーの優しさが非情に切なく、これがモリッシーの本来の姿なのだと予想する。そして自分の作品のヒットチャートを非情に気にするのである。ライブも大切だが、やはりモリッシーにしてみれば、レコードやCDの音源こそが収入源であり、それ以上に自分の存在を証明する媒体として大切に意識をしているのだと思う。その為、DHISCOGRAPHYを見るとモリッシーはコンスタントにアルバムを発表し続けている。

おそらく、過去の権威と既得権にしがみつく英国音楽ジャーナリズムとその周辺が自由奔放に活動しているように見えるモリッシーを嫌っているのだろう。80年代にスミスで「女王は死んだ」「肉食は殺人だ」なんていうアルバムを出して売れまくり好きなことを言ってはと突然スミスを解散して、ソロシンガーになってもやはり売れまくる。NMEでは発売したアルバムを酷評しても、デタラメのインタビュー記事を掲載してもアルバムは必ず一定枚数は売れ続けている、それは英国だけでなくアメリカでは各会場ソールドアウトする程の勢いである。そして老舗音楽番組TOP OF THE POPS」に出演しなくてもアルバムは売れていく。元バンドの忘れられた名前のメンバーに訴えられて、メディアの格好の標的なって裁判に敗訴してもまた復活をしてしまう。それはモリッシーの地道な努力もあるのだろうが、彼の運や、本書のコトバの世界には出てこない彼の魅力が彼の周りにいい人脈やながれを導くのだろう。
決してモリッシーがベジタリアンというのは関係なく・・・・。結局、モリッシーは音楽を通じて自由になりたいだけなのだと思うのだが。その為余計な人間関係云々は好きでは無いのだと思う。

本書でモリッシーがセックスピストルズについて言っている。
「文化の救い主でなく、文化を破壊していた。・・・自分たちで考えて歌う者たちの自由が、私を開放した。彼らのシャウトからだけ自由が見つかった。」。モリッシーは今も自由を追求しているのだと。たとえ文化を破壊することは無く、まだ病気なの?と言われても。
 
 

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