2020年2月16日日曜日

悪の読書日記 パンクライナーノート 森脇美貴夫(著)

2020年 2月 16日

少々気分が重いのである・・・そんな時に自宅の天井裏から偶然『パンクライナーノート』、森脇美貴夫(著)を発掘できた。久しぶりに森脇さんの書いた70年代〜80年代の当時のパンクのレコードに一緒に入れられていたライナーノーツを読んでみる。
文章力強いし、コトバも切れ味が鋭い。今とは違いインターネットが無かった時代にロック雑誌やレコードのライナーノーツは聴きてや音楽好きの人間には貴重な存在であった。ロック雑誌は実際に何かが起こった、記者会見したなどの事象が発生してから2ヶ月くらい遅れての活字であったが、当時はそれでもそんな遅れた情報でも貴重であった。



それしか情報源として存在していなかったのである。そしてレコードのライナーノートである。
70年代〜80年代初期のパンク、ニューウェーブのライナーノーツはほとんどが雑誌DOLLの編集長であった森脇美貴夫氏だと思う。違うのもあるんだが・・・えっ、このレコードのライナーって森脇さんじゃないの?ってのも正直ある。だがセックスピストルズの日本盤は殆ど森脇さんがライナーを書いていたんではないんだろうか?

84年に発売された本書は前述、タイトルの通りライナーを集めて本にしただけの内容である。アルバム一枚だけ発売して消えたバンドや、全く知らないバンドなどかなりのアルバムのライナーが収録されている。
でもやはり特筆すべきはセックスピストルズのライナーである。この一冊の中には、グレートロックロール・スウィンドル、ベスト・オブ・セックス・ピストルズ、勝手にしやがれ(81年盤)と3枚のアルバムについて書かれている。多分、森脇さんのセックス・ピストルズのライナーを書く意気込みは他のアルバムのライナーを書くときよりテンションが高いと思わせる。やはり思い入れの強いバンドであり、パンクを確立させたバンドであったからなおさらである・・・。
前述の通り、一枚しかアルバムを出さなかったバンドはご存知の通りセックス・ピストルズである。一枚しかアルバムを出していないにも関わらず伝説として後世に名を残すのであるから凄いのである。何が凄いのかなんて説明できないが。しかし、一枚しかアルバムを発表していないが伝説となって今でもアルバムが売れているバンド、一枚しかアルバムを出さなかったが今ではアルバムが手に入らないバンド(マニアしか理解できない)と二種類に分別されると思う。X-Ray Spexなんてまさに前者であると思う。

この本にはパンクのライナーノーツながら「ポリス」や「エルビス・コステロ」のライナーが収められている。当時コステロはパンクに触発されてコンピュータープログラマーを辞めてミュージシャンになったとか・・・ポリスはちょっと解らないな。また本書に載っている「ブロンディー」は元々パンクなんかでなかったけど、パンクの波に乗ってしまえとばかり、パンクバンドみたいなイメージ戦略をレコード会社に組まれてしまったそうである。これは本書には書いていないが、この事実を知って本書を読めば納得できると思われる。

ところが80年代末期以降の森脇さんのライナーはどこか元気がないのである。
実は数年前から何を考えたのか、セックス・ピストルズの公式ライブ盤など(本当に公式かどうか不明、しかし日本の大手レコード会社が真面目に発売している)を買い集めているのだが、いくつか森脇さんのライナーが入っていたりするのだが、もうひとつ元気がないというか文章が力強くない。時はインターネットが普及しだした時期でありSNSなんてのはまだ出現していないし、ホームページを持っているバンドすらそんなに多くない時代であった。確かにセックス・ピストルズのライナーを書くことに対して既にモチベーションが上がらない程セックス・ピストルズについて書いていた為、これ以上何を書くねん?!!みたいなところがあったのかもしれない。
 
例えば・・・
またレコード会社からセックス・ピストルズのライナーの依頼かよ?
このアルバムって昔、海賊盤やったアルバムやんけ?あんまり音質変わってないやんけ?
テイチクレコードがなんでセックス・ピストルズのアルバム売るねん?演歌のテイチクやろ?
と、勝手に妄想と想像をしてみるのだが。

そういえば、スターリンのメジャー第一弾「ストップ ・ジャップ・・・」は森脇さんの プロデュースだった、セックス・ピストルズのファーストアルバムの様にギターの音を何度も重ねて録音したそうである。それほどセックス・ピストルズ『勝手にしやがれ』への想いれも強かったのかと・・・これ以上は無理だ!なのか?
文章やコトバはその時の人間の精神状態が強く打ち出されるものであると言われる。確かにそうかも知れずと最近は思う。

さて、現在本書の著者である森脇美貴夫氏はどうされているのだろうか、どこにも森脇さんの名前はでてこないのである・・・週に一度は考える日々。
会った事は一度も無いのだが・・・なぜなら本書は10代の人間の人生を変える位のパワーに満ちていたからである。

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