2019年4月14日日曜日

悪の読書日記 絶筆 野坂昭如(著)

2019年 4月 14日

野坂昭如が亡くなって何年が経つのか忘れてしまった。が、2015年の12月にこの世を去ったそうである・・・



昨年下旬に本屋で見かけた文庫本「絶筆」野坂昭如(著)である。カバー(表紙)が渋い!調べてみたが単行本のカバーはダサダサである。野坂氏が生きていたら絶対怒るだろう。と、見かけて買うか買わまいか悩んだが末、結局買っていた。
本書は約10年に渡る口上筆記による爆裂日記である、正確には野坂氏本人と奥さん陽子夫人の共同作品といえる。野坂氏は脳梗塞で倒れて、自ら筆を握ることが出来なくなり、陽子夫人が代わりに野坂氏のコトバを代筆したのである。

内容はなんと!
1.軍事拡大の安倍政権へのコトバによる攻撃
2.農業問題:食料自給率向上など
3.リハビリ日記
4.震災以降の環境問題:原子力発電所の問題など
5.飼い猫の話
6.孫がやってきた
7.毎年誕生日には大量の花束が届く
8.野坂さんの体験
の毎年繰り返しが主な内容である。

読みながら既に忘れてしまった出来事、実は忘れてはいけなかった事を読みながら思い出す。そして日本の将来に不安を感じる。先の戦争で家族を亡くした野坂氏のコトバであるから、安倍政権への攻撃、農業問題などは非常に重い。果たして日本はどこへ行くのか不安になってくる、しかもこの本は2015年までに書かれた本である。あれから5年弱、日本は野坂氏の忠告を無視した方向へ日々進んでいる。

特に農業問題は最悪である。
現時点で食料自給率という問題どころか、農家に『死ね』と言ってるのと同じである。
つまりそれは日本列島で食文化にピリオドを撃ち、日本列島で暮らす人に餓死して死ねと言ってるのと変わらない・・・
ニール・ヤングがモンサルトを支持するスターバックコーヒーに対して怒りをぶつけた理由がこれである。

90年代ブラウン管の向こうではいつも酔っていた野坂氏であったが、実は『火垂るの墓』の原作者でありかつ実体験をベースにした話であり、『おもちゃのチャチャチャ』の作詞を手がけ、『エロ事師たち』というとんでもない小説を書いていたという、なんでもこいみたいな人物であった。

そして晩年は世間に対してコトバという武器でゲロを吐いていた。この「絶筆」が名作「火垂るの墓」の続編に位置すると考えるのは容易だろうか否。

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