2019年4月30日火曜日

悪の読書日記 命売ります 三島由紀夫(著)

2019年 4月 29日

テレビを付けると、何かと「平成最後」と煩いものである。俺は今を生きているのである。元号が変わろうが俺の人生にはそれほど変化はないのである。平成最後などのぬかす前に、平成という時代に中途半端になっている事を綺麗に対応したらどうなのだ!!と怒りしか感じない2019年のゴールデンなんちゃらである。



1970年にこの世を去った三島由紀夫が1968年に週刊プレイボーイ誌に連載していた『命売ります』である。ここ数カ月三島のこれまで読んでいなかった小説を読むようにしているが、新聞(しかも朝日新聞)や雑誌に掲載されていた小説がけっこうあるのだが、週刊プレイボーイに掲載していたとは驚きである。ノーベル賞候補になるようなレベルの小説家が、週刊プレイボーイにである。今で言えば村上春樹がSPAやサイゾーに小説を連載しているのと同じくらいの話と思うのだが・・・。

しかし、流石の三島である、内容も文章も週刊プレイボーイの読者層にレベルを合わせているという感じなのである。内容も三島テイストながら、非常に読みやすくスイスイと読んでいきしかも三島ワールドに気持ち良く引き込まれるのである。これぞ、天才の技なのか・・・と思わせざるを得ない。



実は昨夜久しぶりに先日お亡くなりになられたモンキー・パンチ氏の「ルパン三世」(漫画)を読んでいたためか、三島のこの小説を読んでいくと頭のなかでモンキー・パンチ氏の絵(キャラ)が動くのである。しかも内容が内容だけにである・・・タイトルは『命売ります』、そのまま命を売りますという商売を始めた主人公、やってきた仕事はモンキー・パンチが描くルパン三世の漫画そのもので、話の内容も同じようなお色気ありのハードボイルド的な内容なのである。登場してくる悪役もピストルとか持って出てくるという三島にしては軽すぎるストーリーであるのは前述の通り、週刊プレイボーイに掲載されていたからであるのだが、もし昨夜「ゴルゴ13」を読んでいたら少しは感じ方が変わったはず。いや、少しでなく相当イメージが変わったのだろうと思う。そう考えると、読書というのは本を読む順番も注意しなければいけないのである。特に小説などは・・・。

話は、自殺を決意した男、主人公が自殺に失敗して、命を売ることを決意し新聞広告へ「命売ります」と掲載するのだが、やってきた依頼で命を売るつもりが前述のようにハードボイルド的スパイ小説に出てくるような謎の仕事が舞い込んできて結局命は売れず、金(財産)だけが増えていく・・・そしていつしか主人公は、自分の命を守ろうとするのだが。それぞれのエピソードが実は・・・という展開は、ここ数年熱狂的に観る唯一のテレビドラマ(海外ドラマ)「ブラックリスト」のシーズン1そのものなのである。FBI捜査官が犯罪コンサルタントの男通称レッドに指示されて悪人共を逮捕していくのだが、実はレッドに適当に指示されていたのでなく、レッドの目的の為に順番通りに指示されて逮捕していた事だったとシーズン終了間際にFBI捜査官は気がつくのである。この『命売ります』は読みながら、そんな話しじゃないのか?と思っていたら・・・である。この『命売ります』は三島にしてはあまり有名な小説ではなく1998年にやっと文庫化(しかも筑摩文庫)された作品で、海外で英語に訳されて販売されている事はないと思う。アメリカ人のテレビ番組スタッフがこれを読んで参考にした事はおそらく無いだろう。
しかし、面白いのは主人公が話後半以降は命を守ろうとする態度に一転するところである・・・そしてそれを利用して窮地を脱するのだが、最後は三島の特徴である、読み手を裏切ってプッツリと切れて終わるのである。これが三島の作品の面白いところであると思っている。
また、新潮社が全集には入れたが、文庫化にしなかった理由も読んでいてなんとなく解るような気がする・・・いやはや、これを書いた三島も凄いが、当時三島にこれを書かせた編集も凄い。









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