2020年5月30日土曜日

悪の毒書日記  超訳「般若心経」 苫米地英人(著)

2020年 5月 30日

素晴らしい天気の土曜日の午前中であったが、朝から読書であった。有名なチベット仏教僧と、彼の父親である哲学者の対談本を読んでいたが、仏教は哲学なのか?、息子よ!!などと内容がヘヴィ過ぎたのか、読んでいて非情に疲れてきたので本を読み替えた。『超訳「般若心経」』、著者の苫米地英人氏の本は、書いている本質、著者の目的は不変の一つであり、それを色々な視点からアプローチをしていることが多く、切り口は多いがどれを読んでも同じだ!と思われている事がよくあるようである。確かにそれはある程度は否定できないかもしれない。
しかし、時々著者の著作で最大風速ジミ・ヘンドリックス以上のパワーと爆風を出力を感じる本がある。その一冊が本書『超訳「般若心経」』である。過去に「超訳ニーチェ」とか「超訳ヴィトゲンシュタイン」みたいな本があったが、そういった類の本とは全く異なる内容である。


般若心経はどこからやってきたのだろうか?と、今まであまり考えたことも無く、実家では毎日の様に同居していた祖母が仏壇の迄に「般若心経」を唱えていたので、小学校低学年の頃には既に、ある程度は覚えていた。但し意味は有り難いコトバを並べているというくらいしか思っておらず、近年何冊か般若心経の解説本を購入して読んでみたが、これといった心に来る本は無かったに近い。本書によると、実は般若心経が仏教発祥の地であるインドからやってきた、しかも三蔵法師が天竺へ言って持ち帰ったものでもない説が有力らしい。全文漢字で構成されている為、天竺⇒中国ときて、中国でサンスクリット語から漢字に翻訳されたという説もあるのだが、どうやら色々な昔の書物や記録を紐解くと、般若心経の存在を示す資料は中国で般若心経の存在を示す資料より一世紀程インドは遅いらしい。さらにインドにはサンスクリット語で書かれた般若心経の原書すら存在していない。むしろインドに伝えたのが三蔵法師であるという説が実は非情に有力なのである。しかも最後の方に出てくる「羯諦ぎゃてい 羯諦ぎゃてい 波羅羯諦はらぎゃてい 波羅僧羯諦はらそうぎゃてい」は漢文でなく、シュメール語であり、シュメール語で作られたマントラであると著者は解説しており、これは適当な推論なのでは無く、本書の説明が明らかに正論であると読んでいて思える。
色々な諸説があるものの、決してこれらが般若心経の価値が劣る訳でもなく。むしろ般若心経を理解する事が生きていくうえで非常に重要なツールであると著者は言っている。

その説明のなかで著者の「空」(くう)についての説明が実に最大風速ジミヘン以上なのである。「空」とは「有」と「無」も包括してしまう。では「有」と「無」とは何なのか?つまり、「線」とは何か「線は点が集まって並んだもの(極めて簡単に言えば)」で、「点」という存在は「ここ」「そこ」という定義として存在として示すことができるが「点」には「面積」も「体積(厚み)」も無い、「あるのかないのか?」・・・「どっちやねん?」。あるとも言えるし、無いともいえる。これが「空」である。これは「点」だけに限らず、結局人間も我々は今ここに存在しているが、それを証明するのは困難である。なぜなら「私」とは何なのか?こうちている間にもカラダの細胞は入れ変わっているが、自分の意思は入れ替わること無く存在している。果たして「わしはどこにおるんじゃ」とまさしく「有」であり「無」である。
もっと大きな意味で考えると、一つの何かの存在が宇宙のすべてとつながっているという「一念三千」に繋がり。一つの「有」が、ケタ違いの「超ぶっちぎりの有」であるという考え方や認識が大乗仏教の「空」であると。

「空」は「無」も「有(モノ=物質)」も飲み込んでいるに値する。それと同じように、我々は心で感受したり想起したりする意識や認識もすべて「空」なのである。すべての現象は「空」なのである・・・と般若心経は著者の超訳では「空」についての超指南書であり、人間一人々の悩みも「空」の中に存在しているのであり、この用のすべてのものが「空」なのである。仏教は哲学なのか?形而上学なのか?現象学なのか?などと言われるて、定義を求めたり、考えたりする人が多いそうであるが、結局は仏教でいえばすべてのものは「空」でしかないのである。そう考えるとやはり、普段の悩みや考え事は 非常に小さな存在であり、存在しないかも?と言えるのレベルなのである。


漫画「攻殻機動隊」の第一巻の最後に、草薙素子が言う「ネットワークは無限だは・・・」。これは「一念三千」と同様。一つの物質は無限に近い「有」で「縁起」でつながっている。それを包括してしまう「空」は無限でしかない。しかも有るのか、無いのか解らない。
まさにネットワークではないのか・・・?



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